−高山市での国際会議「ニュートリノ98」より−


今年(1998年)6月4日より6月9日まで、岐阜県高山市において、 国際会議 「ニュートリノ98」 (正式名称:XVIII International Conference of Neutrino and Astropjysics)が開かれた。 この会議は2年に1回開かれ、前回(1996年)はイスラエルで開かれ、 また次回(2000年)はカナダで開かれることになっている。
 会議2日目、東京大学宇宙線研究所・梶田隆章博士によって、大気ニュートリノ についての スーパーカミオカニデによる観測結果の 詳細が報告された。
 従来から言われていた(ν_μ→ν_e)理論と(ν_μ/ν_e)実験の食い違い( 解説参照)の再確認はもとより、 ニュートリノがやってくる方向による強度の違い(天頂角分布)などを含めて 統合的に分析した結果、少なくともミューオンニュートリノ ν_μ がニュートリノ 振動を起こしていることについては疑いのない事実であるというとを結論した。
 ニュートリノ振動の可能性については、 従来からも指摘されていた ところではあったが、今回の報告は、実験として疑いようのない 完璧なものであったため、 この報告のあとしばらくの間は会場の拍手が鳴り止まないという状態であった。 これをもって、ニュートリノ振動はその実在が確立し、従って、ニュートリノは、 その質量は直接測定にかからぬくらい小さいけれども、しかしゼロではない質量 を持つという事が確立した。
 今回の実験は次のことを意味する。

・質量固有状態 (ν_1, ν_2) の2乗質量差
  Δm^2 = m2^2 - m1^2 = 10^(-2) 〜 10^(-3) eV^2

・ν1, ν2 の混合角θ
  sin^2 2θ = 0.8 〜 1.0

(Y.Koide : 30/06/1998)