太陽ニュートリノの観測結果は
ニュートリノ混合行列の形に決着を与えた！

----ニュートリノ物理学国際会議報告

カナダのサドベリーで開かれたⅩⅠⅩ回ニュートリノ物理学・天体物理学国際会議（６月15日から６月22日）において，スーパーカミオカンデ観測グループの鈴木洋一郎教授（東京大学宇宙線研究所）は，６月15日，最近の太陽ニュートリノの観測は，従来の観測データからは未決着であった太陽ニュートリノにおけるニュートリノ振動のいくつかの可能性の内，唯一１つのみを選び出すとの報告を行った．

現在，ニュートリノとしてνe,νμ ,ντ,の３種の存在が知られている．すでに，大気ニュートリノの観測では，この３種のニュートリノの内，νμ とντの間にニュートリノ振動が起きていて，その混合角は約４５度という最大の混合が起こっているということが知られていた（最近の話題98年）．

太陽ニュートリノについても，ニュートリノ振動が起こっているということは従来から指摘されていたところであるが，そのデータの解釈について，いくつかの可能な解釈が乱立したままであった．

νeとνμ との間に，10^(-5) eV^2程度の２乗質量差のもとで，約2.4度程の小さな混合角での混合が起こっている．

νeとνμ との間に，10^(-5) eV^2程度の２乗質量差のもとで，約35度から45度もの大きな混合角での混合が起こっている．

νeとνμ との間に，10^(-10) eV^2程度の２乗質量差のもとで，約35度から45度もの大きな混合角での混合が起こっている．

νeと，未知の非活性ニュートリノ νs（ステライルニュートリノ）との間に， 10^(-5) eV^2程度の２乗質量差のもとで，約2.4度程度の小さな混合角での混合が起こっている．

今回，鈴木教授は，最新の太陽ニュートリノ観測データは，この内，（２）のみを支持するとの報告を行った．このことは，νμ→ ντ混合に続いて，νe→ νμもまた，大角度混合を示しているということを明らかにしたことになる．

クォークでは，３つの家族間の混合は，一番大きな成分でも約１３度くらい（の質量行列を対角型に選んだ基底でのの混合において）である．その混合行列（小林・益川行列）はほぼ

V=　　(　0.95　0.22 　0.01 ): (　0.22 　1.00　 0.04 ); (　0.01?　0.04　 1.00 )

（符号および位相を略）で与えられることが知られている．これに対して，今回の報告によりニュートリノ混合行列（牧・中川・坂田行列）は

U=　　(　1/√2　 -1/√2　　　0　　 ): ( 　　1/2 　　　1/2　　 -1/√2 ); ( 　　1/2　　　 1/2　　　1/√2　)

であることが判明した．

クォークとレプトンとで，どうしてこんなに大きな違いが存在するのであろうか？この問題についての理論的考察は，物質の究極構成要素であるクォークとレプトンの統一理論を構築する上で，重要なヒントを与えてくれるものと思われる．今後に期待したい．

(Y.Koide 18/06/00)

太陽ニュートリノの観測結果は ニュートリノ混合行列の形に決着を与えた！

----ニュートリノ物理学国際会議報告

太陽ニュートリノの観測結果は
ニュートリノ混合行列の形に決着を与えた！