1995年 ノーベル物理学賞
F. Reines 教授と M. L. Pert 教授に!
--- 受賞理由はレプトン物理学への先駆的な貢献.
(1) フレデリック・ライネス教授 (F. Reines)
-
- 1918年,アメリカ,ニュージャージ生まれ
- カリフォルニア大学アービン校物理学科教授
1956年,それまで仮説的存在であった粒子
ニュートリノ (中性微子) νを,原子炉を使い,
初めて実験的にその存在を確認した.
即ち,原子炉からは核分裂反応の副産物として理論上は強力な
ニュートリノビームが放出されているはずなので,
それを陽子 p に当てることにより,
ν + p → e + n という反応を起こさせてその存在を
確かめようとした.
結果は,理論計算から予想された通りの衝突確率で
この反応が検出された.
こうして,ニュートリノはもはや仮説の粒子ではなくなった.
(1) マーチン・L・パール教授 (Martin L. Perl)
-
- 1927年,アメリカ,ニューヨーク生まれ
- スタンフォード大学線型加速器センター教授
荷電レプトンはそれまで,電子 e (質量 0.51 MeV)と
ミューレプトン μ (質量 105.7 MeV)の2種の存在が知られて
いた.
1975年,パールをボスとする実験グループは,
電子 (e^-)・陽電子(e^+)消滅実験で,
-
-
(e^+) + (e^-) → (e^+) + (μ^-) + (neutral particles)
という反応を 65例発見した.
彼は,これは新しいレプトン(タウレプトン τ と呼ばれる)
(質量 約1800 MeV) が対発生して
-
-
(e^+) + (e^-) → (τ^+) + (τ^-)
-
(τ^+) → (e^+) + (. . .)
-
(τ^-) → (μ^-) + (. . .)
と崩壊したからであろうと推論した(Phy. Rev. Lett.
35, 1489 (1975)).
当初,この主張はあまり受け入れられなかったが
(特にヨーロッパでは),1977年頃になると,ヨーロッパでも
このタウレプトンの存在が実験的に確認されはじめ,
認められるようになった.
現在では,質量をはじめとするいろいろの性質が
正確に知られている.
(10/13/95 小出義夫)