要旨

現在、インターネットやWindowsの流行もあり、 パソコンは広く社会に浸透しており、 その性能は加速度的に上昇している。 この近年見られる性能進展と、 かつての80年代の性能進展とは同じものなのだろうか。 このことを具体的に把握するため、パソコン元年である1982年からの 性能進展に関する研究を行うこととした。

パソコンに関する資料は、ここ2、3年のものは容易に収集出来るが、 それより前のものは、どんどん捨てられてしまう傾向が強く、 特に1980年代の資料の収集についてはかなり困難を極める。 よって、資料がわずかでも残っているうちに 古い時代のパソコンの資料を整理しておくことが重要となる。 そこで、本論文の第1の目的を、パソコンの進展に関する基礎資料の作成とした。

また、パソコンを昔から知る人の多くは、パソコンの性能が 加速度的に上昇していることを感覚的には分かっているだろうが、 それを具体的に数量化して表現したものは無い。 そこで、本論文の第2の目的を 性能進展の数量的把握と、何らかの規則性、法則性の探求とした。

第1章では、本論文で最小限必要となるパソコンに関する 基本事項の概略説明を与えた。 第2章では、パソコン元年である1982年から1998年までの 月刊パソコン雑誌の広告や新製品情報から資料を収集、整理した。 第3章では、力学モデルを用いて、 CPUのクロック周波数とRAMの容量についての推移を考察した。 「技術革新力($F$)は、その年の最大技術到達値($x$)に比例する。」という 仮説を掲げ、最大技術到達値($x$)を時間の関数として算出する式を求めた。 この式は、第2章で得た実際のデータとも非常に良く当てはまることも分かり、 これらのことからCPUもRAMも指数関数的に増加していることが分かった。 第4章では、パソコン元年である1982年から1998年までの パソコンの価格とその推移について考察した。 1993年を境に価格差をもたらす要因が変化してきていることが分かり、 また、時間の関数で表されるような法則性が存在しないということを見出した。 そして第5章では、3章、4章で得た結論のまとめと今後の研究課題について述べた。